トレーニングの効果を最大化する「オーバーロードの原則」とは?

トレーニングの効果を高めるためには、能力が向上するために必要な一定レベルの刺激を得る必要があります。毎回トレーニングが高強度である必要はありませんが、少しずつでもパフォーマンス向上を確実にするためには、トレーニングプログラムに十分な負荷を含めることがカギとなります。この記事では、オーバーロード原則の重要性と、トレーニングの効果を最大化するためのトレーニングプログラムへの応用方法について解説します。

バーベルプレスをする男性:オーバーロードを活かして限界までトレーニング


「オーバーロードの原則」とは?

オーバーロード原則とは、特定の動作や能力発揮の実行能力を向上させるために、身体を現在の限界を超えて意図的に負荷を加えることです。例えば、筋力やパワーを増加させる、有酸素フィットネスや持久力を改善する、速度を上げる、筋肉を増やす、回復力を向上させるなどがあります。オーバーロードがなければ、カラダの変化は期待出来ません。このオーバーロードの原則はアスリート向けの特別なものではなく、人間の生体反応のメカニズムなので、年齢・性別・トレーニングのレベル関係なく、必要不可欠なものです。

プログレッシブオーバーロード(漸進的な過負荷)

適応を促すためには、個々のワークアウトで適用される刺激量を少しずつ増やす(プログレッシブオーバーロード)必要があります。長期にわたってカラダや能力の進化や進歩を続けるためには、時間をかけて体に漸進的なオーバーロードをかけるよう設計されたトレーニングプログラムが必要です。プログレッシブオーバーロードがなければ、トレーニング中の負荷ストレスにカラダや機能が適応してしまい、進歩が停滞してしまいます。

トレーナーがプッシュアップで追い込む(オーバーロードの原則)

トレーニングプログラムにオーバーロード原則を適用する方法

プログレッシブオーバーロードは、時間をかけてトレーニング量や強度を着実に増やすことで達成されます。これは個々の能力や機能レベルに応じて、以下のようなトレーニング変数を変更することで行います。

トレーニング強度

筋トレでは使用重量やセット数、反復回数を含めた総挙上重量が大切です。ランニングであれば総速度、ファンクショナルトレーニングでは動作の難易度が強度となります。

トレーニング頻度

週1トレーニングから週2回へ増やすことがオーバーロードになります。

トレーニング時間

エアロビックトレーニングではトレーニング時間を延ばすことがオーバーロードの1つのポイントになります。

エクササイズ種目

エクササイズ自体の難易度や動作方向(単一方向か複合方向か)、難易度(単関節動作か複合関節動作か)などをコントロールします。

オーバーロードの原則を活かす、バーベルのアームカール

オーバーロード原則に関連するリスクコントロール

正しいプログレッシブオーバーロードを達成することは、トレーニング量や強度などのトレーニング変数やコンディショニングなど、すべてのバランスコントロールが重要です。過負荷に対してポジティブな適応を促しつつも、同時に過度に負荷をかけすぎないことが重要です。過度に負荷をかけすぎると、パフォーマンス低下、過度のトレーニング、バーンアウト、怪我などマイナスの結果を招く可能性があります。オーバーロードの原則を正しく安全に適用するためには、以下の4つのポイントが非常に重要となります。

自分のトレーニングレベルの理解

自分のトレーニングレベルを理解し、負荷の基準値を把握してトレーニングは非常に重要です。それによって適切なプログレッシブオーバーロードでトレーニングをすることができます。人と比較をすることなく、自分の体力レベルにあわせて負荷を増量していかなければなりません。トレーニング記録や計測出来るバイタルサイン(体温、脈拍、体重、体脂肪率など)をチェックしながら、段階的な負荷の目標を設定しましょう。

段階的な増加

あまりにも早く多くのオーバーロードをかけると、怪我をするリスクがあります。特にプログラムの始まりやトレーニング経験が少ない場合は、モチベーションが高い状態でトレーニングすることになるので注意が必要となります。トレーニング負荷に対するカラダの適応を最適化し、怪我のリスクを減らすためには、時間をかけて徐々にオーバーロードを増加させ、負荷や動きに慣れた段階で負荷を増やすことです。そして、怪我の過去履歴や睡眠、栄養摂取状態、疲労度などを考慮しながら、慎重に負荷をアップデートする必要があります。

十分な回復時間の確保

特にプログレッシブオーバーロードをしっかりかけているトレーニング期間は十分な回復時間が必要です。トレーニングストレスが身体にかかった後でなければ適応は起こりません。トレーニング強度が高すぎて十分な回復時間が確保されていない場合はパフォーマンスの低下が生じ、過度のトレーニングによる病気、バーンアウト、怪我のリスクが高まってしまいます。

プログラムの個別化

人はかなりカラダの能力の「個体差」があります。異なる強みと弱点を持ち、異なる状況下で同じストレスやオーバーロードに対して異なる反応を示します。したがって、同じトレーニングをしても同じ適応反応が生じる訳ではなく、プログレッシブオーバーロードもかなり個人差があります。そのため、トレーニングプログラムは個人差を最大限考慮されたものでなければなりません。「何」をトレーニングするかも大事ですが、「どのくらい」の強度や量でトレーニングするかが、プログレッシブオーバーロードを加えながら、逆にオーバーワークのリスクを避けるための重要なポイントになります。

まとめ

特定の運動能力や機能性を向上させるためには、個々のカラダや生活スタイル、体力レベルにあったトレーニングプログラムで現在の限界以上の負荷をかける必要があります。これが時間をかけて適用されるとき、プログレッシブオーバーロードの効果を継続させることができ、トレーニング効果を最大化させることができます。


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【参照エビデンス】

Progressive overload without progressing load? The effects of load or repetition progression on muscular adaptations 2022
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36199287/

Using the specificity and overload principles to prevent sarcopenia, falls and fractures with exercise 2023
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36208722/

Progressive overload without progressing load? The effects of load or repetition progression on muscular adaptations 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36199287/