プライオメトリクスとターンモーションの関係性

プライオメトリクス」は「反動性筋収縮」と訳されます。ジャンプ動作のような動作で、筋肉が収縮されるフェイズと伸長されるフェイズの間隔が極めて短い動作をプライオメトリクスといいます。

バレーボールやバスケットボール、ハンドボールなどほとんどの球技系スポーツではプライオメトリクス動作が含まれています。

アルペンスキーやゲレンデスキーの場合、球技スポーツほどジャンプ動作が多くはありませんが、技術レベルに関係なくターン中に瞬発的に力を入れる場面が多くありますので、アスリートスキーヤーでなくてもプライオメトリックトレーニングを行うことは大切だと思います。

一般的に、筋力トレーニング(ストレングストレーニング)は筋肉の出力を高めるトレーニング、プライオメトリックトレーニングは筋パワーを高めるためにおこないます。

筋パワーは「力✕速度=パワー」なので、プライオメトリックトレーニングの効果をしっかり出すためには、筋力トレーニングをしっかり実践していきていることが重要なので、普段あまり下半身の筋トレをされていない方は、まず筋トレをある程度の期間実施してからプライオメトリックトレーニングをすると、怪我なくトレーニング効果を得ることが出来ます。

プライオメトリックと方向変換能力の関係性

そのプライオメトリックトレーニングについて、2020年10月ノルウェーのノード大学から興味深い研究論文が発表されましたのでシェアします。

プライオメトリックトレーニングをすると方向変換能力が高まる
Association of strength and plyometric exercises with change of direction performances 2020

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0238580

このリサーチを要約すると以下の様になります。

  • 23人の男子サッカー選手が、パワーが求められるスプリントダッシュから180度変換の動作と速度が優位となる45度での方向変換のパフォーマンスを計測
  • 各選手の最大筋力とパワーパフォーマンスの関連性を調査
  • プライオメトリクスのパフォーマンスと方向転換動作のパフォーマンスには相関関係があった
  • 筋力と方向転換のパフォーマンスは相関しなかった

プライオメトリックトレーニングにはアジリティトレーニングでの「方向転換」の動作パフォーマンスにプラスの影響を与えるとのことです。

サッカー選手対象の実験ですが、動作にフォーカスすればスキーのターン動作にも非常に参考になる研究です。

筋力も大事ですが、それよりも短い時間に筋肉を伸ばしたり収縮するプライオメトリクスの方が、方向転換の動作における筋活動に近いことが考えられる、と推察されています。

方向変換動作は、スキーのターン動作とほぼ同じ筋肉の使い方、機能的動作をします。

スクワットジャンプのような単一方向の動作のプライオメトリックトレーニングでも、複合的な動作である方向変換動作にリンクする、というのはとても面白い研究結果です。

フィットネスジムでのトレーニングをベースにしていると筋力強化や持久力強化はダンベルやバーベル、フィットネスマシン、ランニングマシンなどで鍛えることが出来ます。

プラスしてプライオメトリックトレーニングを加えると、よりスキーのパフォーマンスアップにつながります。

縄跳びのような小刻みなジャンプ動作であれば下腿を中心としたプライオメトリックトレーニングになりますし、スクワットジャンプや膝抱え込みジャンプのようなプライオメトリックトレーニングだと、股関節や膝関節周囲の筋群をメインに全身を使ったプライオメトリックトレーニングになります。

トレーニングジム内はもちろん、外でのジョギングのついでに軽くジャンプ系のエクササイズを入れることで、スキーパフォーマンスを高めるプライオメトリクストレーニングになります。

スキーヤーは水平方向のプライオメトリクスがオススメ

もう1つ、2021年1月に英国・エセックス大学他の研究チームから発表された論文をシェアします。

垂直方向と水平方向を向いたプライオメトリックトレーニングが身体能力に及ぼす影響.メタ分析的比較
Effects of Vertically and Horizontally Orientated Plyometric Training on Physical Performance: A Meta-analytical Comparison 2021

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32897526/

この研究では、プライオメトリクスの動作方向について比較しています。トレーニングにおいて「特異性」という視点は非常に重要です。特異性とは、エネルギー代謝の種類や使う筋肉群、動作のパターンなどを意味しますが、この研究ではプライオメトリクス動作の方向性の特異性に着目しています。

ラテラルバウンディングのような水平方向のプライオメトリクス動作とジャンプ動作のような垂直方向のプライオメトリクス動作を比較したところ、

  • 水平方向のプライオメトリックトレーニング(HPT)は垂直方向のパフォーマンスを向上させる点では垂直方向のプライオメトリックトレーニング(VPT)と同等以上の効果がある。
  • 水平方向のパフォーマンスを向上させる点ではHPTはVPTよりも優れている。

という結果になったそうです。

すなわち、水平方向のパフォーマンスを改善させたいのであれば、水平方向のプライオメトリクストレーニングが有効だということです。アルペンスキーやゲレンデスキーの場合は垂直方向にも動きますが、水平方向へのパワー発揮も重要なので、スキーパフォーマンスを高めるためにプライオメトリックトレーニングをするのであれば、横方向のプライオメトリクストレーニングの方がスキーパフォーマンス向上には役立ちます。

まとめ

ジャンプ動作は足関節・膝関節・股関節の機能的調和が求められる動作なので、サポートしてきた選手を見ていても、ジャンプ動作(プライオメトリクス動作)が上手い選手はスキーの動作が上手いです。

大人になると、なかなか思いっきりジャンプする場面が減ってきますので、社会人スキーヤーの方の方が、プライオメトリクストレーニングの恩恵を早く受けられると思います。

ただ高く飛ぼうとすると筋力的負荷が強くなりすぎるので、足関節・膝関節・股関節をバランスよく動かすことと、着地の際の荷重位置が踵になりすぎたり、つま先になりすぎないように、動作の質に意識をはらったトレーニングをオススメします。

そして、ジョギングのついでに横方向に重心移動するラテラルバウンディングをやってみたり、発展させてサーキットトレーニングやミニハードルやマーカーなどを使ったフィールドトレーニングなどで水平方向のバウンディング動作が含まれるエクササイズを取り入れてると、質の高いオフトレをすることが出来ます。

S-CHALLENGE Training Program Works
代表/フィジカルトレーナー 飯島庸一

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