左右差解消! 四肢対称性を高めるスキーオフトレのポイント

スキーは他のスポーツよりも、高いレベルで左右の対称性が求められます。球技だと利き腕や利き脚を元に、いろいろな動作を行いますが、スキーのターン動作は「左右対称動作」なので、利き腕・利き脚関係なく同じように使うことが求められます。

過去に発表されている研究論文から、次のことがわかっています。

  • 四肢の対称性は雪上パフォーマンスに関係する
  • 対称性が十分ではないとケガのリスクになる(特に19歳以下の選手)

左右の対称性が高くない方は、オフシーズンに少しでも解消していけるように、改善アプローチも含め、以下解説していきます。


アルペンスキー選手の四肢対称性と傷害リスクの関係性

2018年にオーストリア・インスブルック大学からアルペンスキー選手の四肢対称性の研究論文が発表されました。

アルペンスキー競技選手の四肢対称性指数。年齢に応じたパフォーマンスレベルに応じた基準値と傷害リスクの特定
Limb symmetry index in competitive alpine ski racers: Reference values and injury risk identification according to age-related performance levels 2018

この研究では、285名のアルペンスキー選手を対象にして四肢対称性指数や外傷性のリスク、そして片脚でのカウンタームーブメントジャンプや片脚スタビリティテストなど、片脚でのハイパワーのチェックだけではなく、バランスコントロールを伴った機能的動作パフォーマンスもチェックしています。

285名の選手の内訳は、10-14歳の選手が95名、15-19歳の選手が107名、エリート選手(20-34歳)が83名とかなり対象人数が多い研究です。

この3つの年齢毎にパフォーマンスと四肢対称性の相関関係を調べてみると、特に10-14歳と15-19歳のカテゴリーで四肢対称性のレベルが外傷性障害のリスクに関係していることがわかりました。

また20-34歳のエリートカテゴリー選手たちの方が相対的に四肢の対称度が高い結果という結果でした。

やはり雪上パフォーマンスの高さと四肢の対称性は関係しているようです。
さらに、四肢対称性は怪我のリスク抑制にも関係しているようなので、特にジュニア世代の選手たちのトレーニングについても、より対称性を考えたオフシーズントレーニングをしていくことが大事だと思います。

では、どのようにトレーニングすれば、四肢対称性を高めることが出来るのでしょうか?

そのカギは「アシンメトリーエクササイズ」にあります。

「アシンメトリーエクササイズ」の有効性

2019年、スペイン・サンホルヘ大学ほかの研究チームがサッカー選手の四肢対称性に関する研究をしているので、こちらもシェアします。

サッカー選手における跳躍性能向上と四肢間非対称性の減少のための3つの異なる片側筋力トレーニング戦略の比較
A Comparison of Three Different Unilateral Strength Training Strategies to Enhance Jumping Performance and Decrease Inter-Limb Asymmetries in Soccer Players. 2019

この研究では、サッカー選手の四肢対称性を減少させるために、片側の筋力トレーニングを行わせ、両脚のジャンプパフォーマンスの変化をチェックしています。

片脚でのジャンプやホッピングなど、左右非対称動作=アシンメトリーのトレーニングをすることで、左右差が解消出来、両脚ジャンプのパフォーマンスが向上したとのこと。

さらに興味深いのは弱い脚でトレーニングを開始したグループの方が、大きくパフォーマンスアップにつながった、ということです。

つまり、左右非対称な状態を解消するには、「筋力的に弱い脚からトレーニングすること」と「アシンメトリーなトレーニングをすること」が重要だということです。

シングルレッグデッドリフト(ランドマイントレーニング)、アシンメトリーエクササイズで四肢対称性をトレーニング

両脚を同じように使う「スクワット」よりも、「ランジ」エクササイズや「片脚でのスクワット」、あるいは「シングルレッグデッドリフト」などの片脚でのエクササイズは四肢対称性を高める上で、有効なトレーニングといえます。

最初は「シンメトリーエクササイズ」からスタート

ただし、自分がどのくらい左右非対称なのか理解出来ていないと、アシンメトリーのエクササイズも効果は半減します。

アシンメトリーの動作の中で左右差をチェックするのは、動作を視る能力が必要となりますので、まずは左右差が確認しやすい左右同じ動作を同時に行うシンメトリーエクササイズも上手く組み合わせてトレーニングするのが効果的です。

左右対称のスクワットで四肢対称性をチェック

まずは基本となる左右対称動作=シンメトリーエクササイズも行い、左右非対称動作=アシンメトリーエクササイズも取り入れていくことで、アシンメトリー動作の中の左右差もより確認しやすくなります。

シンメトリーのエクササイズもアシンメトリーエクササイズと並行しておこなうことで、自分がどのくらい左右対称な動作が出来ているのか、あるいはどこに左右差があるのか、把握しながらトレーニングを進めていけます。

常にアシンメトリートレーニングだけをしていると、左右対称か非対称かわからなくなってしまう可能性があります。

実際のトレーニングとしては、例えば下半身の筋力トレーニングの場合は、スクワットを最初に行い、シングルレッグデッドリフトやサイドランジなどのアシンメトリーエクササイズもトレーニングする。
そして、再度シンメトリーエクササイズであるスクワットを行ってみる。こんな流れて行うと良いかと思います。

1回のセッションでシンメトリー・アシンメトリー混ぜても効果を狙ったトレーニングが出来ますし、セッションを分けてシンメトリー・アシンメトリーのトレーニングをしても良いと思います。

1回のトレーニング時間が多く取れない方は、曜日によってアシンメトリーエクササイズとシンメトリーエクササイズを分けてトレーニングするやり方でも良いでしょう。

まとめ

スマホやタブレット端末があれば、自分自身でも動作の確認は簡単にできますので、なるべく頻度多くセルフ動作チェックすることをオススメします。

その際に、以下のポイントを押さえて撮影してください。

左右の差を確認するときは、「重心の高さ」にスマホをセットして「後ろから撮影する」と、対称性がしっかり確認出来ます。

「重心の高さ」と「後ろから撮影する」のがポイントです!

  • 四肢の対称性は雪上パフォーマンスに関係する
  • 対称性が十分ではないとケガのリスクになる(特に19歳以下の選手)
  • 左右対称にしていくためには片脚でのトレーニングがかなり有効

ターンの左右差を課題としているスキーヤーは多いかと思いますが、アシンメトリーエクササイズとシンメトリーエクササイズを上手く組み合わせて、左右対称性を高めていってください。

S-CHALLENGE Training Program Works
代表/フィジカルトレーナー 飯島庸一


【参照エビデンス】

Limb symmetry index in competitive alpine ski racers: Reference values and injury risk identification according to age-related performance levels 2018
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30450248/

A Comparison of Three Different Unilateral Strength Training Strategies to Enhance Jumping Performance and Decrease Inter-Limb Asymmetries in Soccer Players. 2019
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=30860411

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