4週間隔でトレーニングメニューを更新すべき理由とメリット


トレーニングメニューの必要性

トレーニングメニューは、トレーニングに対する特定のゴールに対して、進捗状況を追跡し、バランスのとれたフィットネス ルーチンを獲得するのに非常に役立ちます。適切なトレーニングプログラムは個々のフィットネスレベル、ゴール、運動に利用できる時間などを考慮して、個々のニーズに合わせて作成されます。

筋量増量、筋力アップ、脂肪の減少、スポーツパフォーマンスの向上、ケガのリスク低減、健康維持など、いずれの目的であっても、適切に設計されたトレーニングメニューは、トレーニング努力に対する結果を最大化することができます。

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但し、トレーニングメニューは誰かのために既に作られたトレーニングプログラムや、画一的なトレーニングプログラムでは、十分な効果を得ることが出来ません。

特に最も効果を引き出すことの出来るトレーニングメニューは、個別性を重視したトレーニングメニューであり、トレーニングの目的に応じた特異性を考慮したトレーニングメニューでなければなりません。

トレーニングメニューを更新すべき理由①:筋の役割の固定化を防ぐ

様々な理由がありますが、まずはカラダの機能的側面からお伝えしたいと思います。

筋肉や関節は同じ動作を繰り返すことで動きが習慣化され、習慣化された運動方向に動きやすくなっていきます。トレーニングメニューにあるいくつかのエクササイズで使われている動作については、最小抵抗の軌道で動く様に動作が効率化されていきます。これは「運動の自動化」というポジティブな側面と、「筋の役割の固定化」というネガティブな側面があります。

要するにトレーニングメニューにある特定のエクササイズの動作については順応・適応が起きてくるので、使用重量や反復回数、セット数といった直接的な刺激は増やせていくことが出来ても、動作の適応に対する刺激は低下していくことになります。

2020年・フロリダ州タンパ大学から出されたエビデンスでは「同じエクササイズを継続してトレーニングするよりも適宜変更した方が最大筋力は向上する」ことが明らかになっています。

総負荷量を上げていく(プログレッシブオーバーロード)ことも非常に重要ですが、動作の固定化はカラダの機能性向上、特にアスリートやスポーツパフォーマンス向上を目的にトレーニングを行っている人にとってはネガティブな点があります。

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運動やトレーニングでメインに鍛える主動筋の他に、拮抗筋固定筋協調筋といった役割を担う筋肉がバランスよく機能することで、カラダの連鎖性の向上や調和が保たれた動きができるようになります。

拮抗筋は主動筋が上手く機能しやすい様に、主動筋の動きに合わせて伸びる役割を、固定筋は主動筋や拮抗筋が上手く働くために、体幹などの支持基体と繋がる役割、そして、協調筋は主動筋や拮抗筋が動きやすくする役割を担います。

トレーニングメニューが更新されず、続けて使われるということは、いかにバランスを考慮して作成されたプログラムであっても、上記4つの筋の役割が変わらず、「筋の役割の固定化」に繋がってしまいます。

トレーニングメニューは、科学的知見をもとにトレーニング効果を考慮しつつ、上記で述べた「筋の役割の固定化」にも配慮しながら、定期的な更新が不可欠です。

トレーニングメニューを更新すべき理由②:神経系の促通パフォーマンス

特定の筋肉のトレーニングが一定期間以上継続されれば、筋の役割が固定化され、動作に偏りが生じやすくなります。当然、その偏りはトレーニングに関係した筋肉だけではなく、その筋肉に関係した関節においても影響が生じます。

特定方向の関節可動が増えるということは、過剰な運動方向と過小な運動方向が生じやすくなります(関節運動の偏り)。これは、パフォーマンスの問題だけではなく、怪我の発生にも繋がりやすくなります。

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また、動作の偏りというのは筋肉や関節だけではなく、付随する神経系にも偏りが生じます。トレーニングしている特定の運動方向の動きに対して、神経系も即通性が向上していきます。逆に使われていない筋群や関節可動に関係する神経系との差が増してしまいます。

その結果、「筋肉・関節・神経系」に偏りが出ることで、最終的に「姿勢」、特に立位姿勢の歪みが生じやすくなります。これが一番大きな問題。ウエイトリフターの様に、競技で使う動作がシンプルであっても、主動筋や拮抗筋だけではなく、それらの機能を100%発揮させるためには、関連する固定筋や協調筋のトレーニングが不可欠。

定期的にトレーニングプログラムを最適化していくことは、例えばスキーの様に非常に多面的な動作が求められる運動であれば、競技特性を踏まえつつ、障害予防の観点からも、競技パフォーマンス向上の視点からも非常に重要なことです。

トレーニングメニューを更新するメリット①:モチベーションの維持

トレーニングエクササイズの変更により、筋肉の成長をより促し、適応を防ぐことができます。様々な種類の運動を行うことで、カラダ全体のパフォーマンスが向上することにより、トレーニング意欲を継続できます。

新しいトレーニングエクササイズを行うことはモチベーションの維持にも役立ち、飽きることなく継続することができます。

新しいトレーニングプログラムを開始した初期の数週間で急速に適応し、結果として筋肉のサイズや形状に変化・機能的進化が見られます。しかし、その後は徐々にカラダはトレーニング負荷に対して順応し始めるため、プログラム構成として素晴らしいものであったとしても、そのトレーニングメニューの効果は次第に減少していってしまいます。

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2016年にブラジル・リオデジャネイロ市のフィットネスセンターの会員5240人の継続率・離脱率とその理由を分析した研究があります。5240人の会員を12か月間追跡調査したものですが、63%の人が3か月以内にトレーニングを中止していました。12か月以上継続していたのは僅か4%未満とのこと。

プロフェッショナルなトレーナーの意見として、「トレーニング効果を出すためには同じプログラムを3ヶ月以上継続することが大切」という記事をよく目にします。確かに科学的トレーニング理論を元にした考えとしては非常に正しいと思います。筋肉養成が主目的でモチベーションの高いプロビルダーやフィジーク選手なら3ヶ月間同じ筋トレメニューを継続出来ますし、継続する意味もあります。

しかし、普通の人はトレーニングに対する意欲があっても、3ヶ月間同じプログラムを継続することでモチベーションが下がり、60%以上がトレーニングを止めてしまうのであれば、全く意味がありません。

適宜、トレーニングプログラムを更新することは、多くのエクササイズを経験していくことにもなり、筋肉群に対して広範囲にわたる刺激を与えることができます。これは、特定の筋肉群だけでなく全体的な身体能力を高める効果があります。

さらにトレーニングルーチンに頻繁な変化を加えることによってモチベーションの維持につながり、長期的な運動習慣の構築にも役立ちます。

トレーニングメニューを更新するメリット②:障害リスクの減少

トレーニングメニューを定期的に更新するもう一つのメリットは、怪我のリスクを減少させることです。同じエクササイズを継続するということは、同じ動作を繰り返すことになります。これは動作を洗練させるメリットがありますが、同時に特定動作の繰り返しによるオーバーユースのリスクを高めてしまいます。

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また特に筋力トレーニングの場合、初期の頃は使用する負荷や反復回数が直線的に増えていきますが、次第に負荷の増量度合いや反復回数が停滞してきます。すると挙上重量を無理して増やしたり、反復回数を追い求めるためにフォームが乱れてきて、関節を傷めるきっかけにもなります。

トレーニングの目的がスポーツに対するケガ予防であった場合、4週間程度の間隔でトレーニングメニューを変更することは、提供されたエクササイズからより多くの多面的動作を学習する機会を得ることが出来ます。

障害リスクの減少のためには筋量増量・筋力アップも不可欠ですが、同時に「動作を鍛える」ことも必須となります。沢山の動作を経験することで、筋肉と神経系のコネクションがより鍛えられ、エラーに対する反応も向上します。

トレーニングメニューの変更のサイクル

トレーニングメニューの変更周期

筋力トレーニングでは、3-4週間毎にトレーニングの内容を変更することで筋肉成長を促進させることが出来ます。勿論、1週間あたりのトレーニング頻度にも関係します。3週間より短いとエクササイズにおける動作の洗練性が十分でない可能性があります。5週以上になると負荷に対する頭打ち(プラトー効果)が出始めて来ます。

勿論、トレーニングに対するモチベーションが維持出来ているのであれば、多少頭打ちなってもトレーニングを継続することは問題ありません。しかし挙上重量が低下してくると、フォームの乱れも生じやすくなり、ケガのリスクが高まってしまいます。

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有酸素運動の場合、運動の種類や強度は約4-6週間ごとに変えることで、オーバーユースを未然に防ぐことが出来ます。

ストレッチやコアトレーニングもまた、新しい動きを取り入れることで、バランスを保ちながら関節の柔軟性と機能的安定性を高めることが出来ます。

トレーニングメニューの変更時期の判断基準

トレーニングメニューの変更時期は、個々の身体の反応や運動への順応性を判断することが重要です。カラダがトレーニングプログラムに慣れてしまい、成果が頭打ちになったと感じた時が変更のサインでもあります。

進捗停滞:同じ重量やリピート数で停滞を感じた場合、トレーニングメニューの見直しが必要。
運動能力の向上:特定の運動で以前よりも楽に行えるようになった場合、より高い目標設定が求められる。

上記のポイントに留意しながら、個々の進捗に合わせてトレーニングメニューを更新し、長期間にわたり身体が進化し続けるような、プログラミングが必要です。但し、トレーニングプログラムの更新は、単に新しさを求めるだけでなく、科学的な根拠に基づいた計画的かつ意図的な方法で行うべきです。

まとめ

トレーニングの効率を最大化するには、トレーニングメニューの変更は不可欠です。カラダは新しいトレーニング刺激に迅速に適応し、筋肉のサイズや力の向上が見られますが、常に同じ刺激を与え続けると進化が停滞してしまいます。そのため、3-5週間ごとにトレーニングメニューを変えることが推奨されます。

この定期的な変更により、筋肉は新しい刺激に耐え、筋肉の成長を続けることができます。また、異なるエクササイズを行うことで、さまざまな筋肉群が刺激され、全体的な身体のバランスと機能の向上が期待できます。さらにより多くの動作を行っていくことにより、神経伝達系の機能も向上していきます。

プログラムを変更する際の一つの注意点は、ただ単に新しいエクササイズを導入するだけでなく、個々のトレーニング目標と体の反応にも配慮する必要があります。適応が起こる速度は個人によって異なるため、トレーニングの進捗を定期的にチェックし、個人の反応に基づいて適宜プログラムを調整することが重要となります。

トレーニングプログラムの変更は、筋力や筋持久力の向上に寄与するだけではなく、運動に対する新鮮な刺激やモチベーションの向上という心理的なメリットももたらします。新しいチャレンジは、トレーニングに対するモチベーション向上に繋がり、トレーニングを継続するための重要な要因となります。


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参照エビデンス

Auto-Regulated Exercise Selection Training Regimen Produces Small Increases in Lean Body Mass and Maximal Strength Adaptations in Strength-trained Individuals
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29016481/

Adherence to physical activity in an unsupervised setting: Explanatory variables for high attrition rates among fitness center members 2016
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26874647/

Similar metabolic adaptations during exercise after low volume sprint interval and traditional endurance training in humans 2008
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17991697/

Short-term sprint interval versus traditional endurance training: similar initial adaptations in human skeletal muscle and exercise performance 2006
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16825308/

Skeletal muscle respiratory capacity, endurance, and glycogen utilization 1975
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/165725/

Influence of exercise intensity and duration on biochemical adaptations in skeletal muscle 1982
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6295989/

Specificity of training adaptation: time for a rethink? 2008
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2375570/

Repeated practice runs during on-snow training do not generate any measurable neuromuscular alterations in elite alpine skiers 2022
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35966108/