左右差を減らすことのメリット(左右対称性の向上)

普段、サポートしているスキー選手やクライアントさんによく声掛けするキーワードの1つに「左右差を常に意識して下さい」ということがあります。

スキーは他のスポーツよりも非常に高いレベルで左右対象な動作を求められるスポーツです。スキーと同じくらいの左右対称性が求められるスポーツは、自転車競技(オーバルを除く)、水泳の平泳ぎとバタフライ、陸上競技の100m走、くらいでしょうか。


スキーヤーに求められる「左右対称性」の能力とは?

左右対称性」という言葉には、2つの視点があります。1つは動作のしやすさ(巧緻性)の左右差、もう1つは筋力的な左右差です。両方器用に使える人もまれにいらっしゃいますが、多くの人は利き手・利き足があります。

普段、歩いている時、左右均等に脚を動かしているように思われていると思いますが、実は片脚で蹴って(能動的)、片脚で受け止めている(受動的)ような使い方をしている人が多いです。

利き手は右手の人が多いと思いますが、能動的な脚の使い方をしているのも右脚の方が多いです。ボールを蹴る脚やゴルフでスイングする際の後ろ脚が能動的な脚です。スキーのターンでも乗り込んでいく(荷重・加圧していく)のは右脚が得意な方が多いのではないでしょうか?

左脚は受動的な役割が得意なので、バランスコントロールをするのが上手いです。能動的・受動的というのは、機能的なものなので左右同じ機能が出来るようにファンクショナルトレーニングを行えば、左右差を解消していくことが出来ます。

左右サポート解消に必要なトレーニングとは?

もう1つ、筋力の差はストレングストレーニング(筋トレ)を行うことで差を埋めていくしかありません。ここでポイントになるのが、左右差を少なくするにはどんな筋力トレーニングが良いのか、ということです。

筋力アップだけを考えるとバーベルでのトレーニングが重いものを持ち上げやすいので良いのですが、左右差を自覚しにくい、というデメリットがあります。ダンベルの方が左右差を認識しやすいので、左右差解消という目的が強いのであれば、ダンベルでのトレーニングをおすすめします。

マシンでトレーニングする場合、例えばレッグエクステンションだと、殆どのメーカーのマシンは、左右一緒に膝関節を伸展させて大腿四頭筋をトレーニングするタイプだと思います。

左右対称性を高めるためのアシンメトリーエクササイズ

左右別々に動くものは、ダンベルと同じように左右差を認識しやすいので普通にトレーニングすればOKですが、左右一緒にトレーニングするタイプのレッグエクステンションマシンであれば、左右別々にトレーニングすると同じウエイトでも左右の反復回数や神経伝達の違いを認識出来ると思います。

エリートスキーヤーの左右対称性

2018年10月にオーストリアで発表された論文では、203人の15-19歳のユース選手と83人の20-34歳までのエリートスキーヤーの筋力の左右対称性を検査しています。

エリートスキーヤーの方が非対称性が少なく、ユース選手の左右の非対称性が大きい場合は、外傷のリスクが高いという研究結果となっています。

Limb symmetry index in competitive alpine ski racers: Reference values and injury risk identification according to age-related performance levels 2018

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30450248

まとめ

上手くなるためにはファンクショナルトレーニングで四肢が左右同じように使えるようにしていくことが重要になり、怪我の予防としては筋トレで左右の筋力差を少なくしていくことが重要となります。

社会人スキーヤーの方は、ファンクショナルトレーニングとストレングストレーニングを分けて行うより、左右非対称(アシンメトリー)の筋力トレーニング種目を多く選択したり、ダンベルを使用したりして、左右差を認識しながら筋トレするのがおすすめです。

左右差の解消は、選手の方も社会人スキーヤーにも大きなメリットがあります。普段のトレーニング内容を再度チェックしたり、パーソナルトレーニングを利用している方はトレーナーの方に相談して、シーズンに向けて効率的なトレーニングに励んで下さい。

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