スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニング:パフォーマンスを飛躍的に高める方法

スキーのバランス感覚を高めるためにどんなトレーニングをしていますか? バランスボールやバランスディスクの上に乗ったり立ったりすることで、バランス感覚を高めているスキーヤーが多いのではないでしょうか?

しかし、実は単にバランスボールやバランスディスクを使ったトレーニングだけでは、実際のスキーパフォーマンス向上にはつながりにくいのです。スキーヤー向けのバランス感覚向上トレーニングには、もっと効果的な方法があるのでご紹介します。

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スキーヤーに必要なのは「動的バランス」と「体性感覚」

スポーツ動作の中では、その場でバランスをじっとキープする瞬間はほとんどありません。スキーを含めたほとんどのスポーツでは、動きの中でバランスをとるシーンがほとんどなのです。この「動きの中でのバランス」を「動的バランス」と呼びます。

また、体のバランスを保つためには、自分の体の位置や動きを感じ取ることが大切です。私たちは様々な感覚を使って、体の重心がどう変化しているかを感じ取り、それをもとに体の動かし方を調整しています。

体のバランスを保つためには3つの感覚が必要です。

  • 目で見る感覚(視覚)
  • 耳の中のバランス感覚(前庭感覚)
  • 体の感覚(体性感覚)

これらの感覚から得た情報は、脳の表面(大脳皮質)でまとめられ、脳の内側部分(大脳辺縁系)や小脳などで調整されます。そして、今までの経験をもとに、適切な体の動きとして表れます。

そして、この中でも特にスキーヤーが普段のトレーニングで意識すべきなのが「体性感覚」です。スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニングでは、この体性感覚を重点的に鍛えることが重要です。

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なぜスキーヤーにとって「体性感覚」が重要なのか?

体性感覚とは、皮膚が温冷を感じるような「表面感覚」と、姿勢などを制御するような「深部感覚」からなります。簡単に言えば、身体を動かす際に必要な感覚です。

スキーで言うと、足裏という表面感覚の情報を元に姿勢やポジションをコントロールする深部感覚が働き、その2つが上手く機能しているのが良い滑走感覚になります。つまり、体性感覚が良くなれば、スキーは上達していくのです!

研究によれば、体性感覚知覚トレーニングは運動学習を強化することが示されています。また、人間の姿勢制御において感覚の重み付けが変化するダイナミクスが明らかにされており、体性感覚の重要性が裏付けられています。

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スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニング:効果的な方法

正しい動きを身につけるためには、適切な感覚の刺激が必要です。感覚が入力されると、それを脳が理解し(知覚)、体を動かす(運動)ことにつながります。

正しい動きができるように、どのような感覚刺激を与えるかを考える必要があります。特に体の感覚(体性感覚)を中心とした刺激を与えることで、動きが生まれ、その繰り返しによって正しい動きが身につき、バランス感覚も向上します。

1. 片脚エクササイズで体性感覚をレベルアップ

片脚でのトレーニングは、スキーヤーに必要な動的バランスを向上させるのに非常に効果的です。各エクササイズ共通のトレーニングポイントは「足裏の荷重位置」です。しゃがむとき、立ち上がる時、足裏のどこに強く荷重しているのか、常に足裏の荷重位置を頭でモニタリニグしながら、トレーニングすることで体性感覚を強化することが出来ます。

ボックスシングルレッグスクワット

  • 低めのボックスや階段の最下部、段差などを利用します。
  • 片脚で立ち、ゆっくりとスクワットの姿勢をとります。
  • 股関節、膝、足首が一直線上にあるようにします。
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シングルレッグデッドリフト

  • 片脚で立ち、反対の脚を後ろに伸ばしながら上半身を前に倒します。
  • ハムストリングに張りを感じたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
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2. ダイナミックバランストレーニングで重心修正能力を強化

スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニングでは、静的なバランスだけでなく、動的なバランストレーニングも重要です。

サイドランジからの片脚支持

  • サイドランジを行った後、ランジした脚で立ち上がり、片脚でバランスを取ります。
  • これにより、横方向の安定性が向上します。

ホッピングとバウンディング

  • 同じ脚で跳ぶ「ホッピング」と、片脚から反対の脚に跳ぶ「バウンディング」を組み合わせたエクササイズは、動的バランスを向上させます。
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バランス感覚向上トレーニングの注意点

バランス感覚を高めるためには、足の裏にたくさんある「メカノレセプター」と呼ばれる感覚受容器を刺激したり、筋肉の張り具合を感じさせたりします。動きを良くしたい部分に意識を向けさせることが大切です。

「片脚のエクササイズをすれば外スキーに乗りやすくなる」、「バランスボールに乗れるようになればバランス能力が向上する」、ということではなく、足裏と脳との対話を繰り返すことが、バランス感覚向上トレーニングの重要なポイントになります。

そして、バランスグッズを使ったトレーニングには、いくつか注意点があります。

ケガのリスク:バランスボールやバランスディスクなどのバランスグッズを使うとケガをするリスクが高まります。トレーニングする際には周囲の状況をチェックして、転倒しても怪我のリスクがないようにしましょう。バランスを崩して転倒すると、不自然な体制でどこかを地面につき、ケガにつながる可能性があります。

難易度の上昇:バランストレーニングは上達すると効果が薄れるため、さらに難易度を上げる必要があります。そうすると、トリッキーなポーズになり、ケガのリスクが高まる一方で、鍛えたい筋肉への刺激は分散されてしまいます。段階的な難易度アップがバランス感覚を向上させていくためには重要なポイントになります。

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まとめ:スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニングの重要性

スキーヤーのバランス感覚を高めるためには、単に静的なバランストレーニングをするだけでなく、動的バランスと体性感覚を意識したトレーニングが重要です。足裏の感覚や骨盤の向き・傾き、つま先の向きなどに意識を向けながらトレーニングすることで、実際のスキーパフォーマンスに直結するバランス能力を養うことができます。

また、バランスグッズを使ったトレーニングは楽しくトレーニング出来ますが、体性感覚を高めていくにははベーシックなエクササイズの中で感覚を研ぎ澄ましていくほうが効率的です。まずは難易度の低い自分の体重をベースにしたエクササイズをしっかりおこない、段階的にバランスボールなどのアイテムを利用したバランス感覚向上トレーニングを行いましょう。

体性感覚を鍛えることで、不規則な動きにも対応でき、様々な雪質、斜度、ターン孤などの条件変化にも柔軟に対応できるスキーヤーになれるはずです。

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参照エビデンス

Non-linear stimulus-response behavior of the human stance control system is predicted by optimization of a system with sensory and motor noise
人間の姿勢制御システムの非線形刺激応答挙動は、感覚および運動ノイズを含むシステムの最適化によって予測される 2011
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21161357/

Potential Mechanisms of Sensory Augmentation Systems on Human Balance Control
感覚増強システムが人間のバランス制御に与える影響の潜在的メカニズム 2018
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fneur.2018.00944/full

Somatosensory perceptual training enhances motor learning by observing
体性感覚知覚トレーニングが観察による運動学習を強化する 2018
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30230990/

Sensory reweighting dynamics in human postural control
人間の姿勢制御における感覚の重み付け変化のダイナミクス 2014
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24501263/

A shared neural integrator for human posture control
人間の姿勢制御のための共通神経統合器(2017)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28446583/


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