スキーは寒冷環境下での運動であり、通常よりも多くのエネルギーを必要とします。しかし、適切な栄養管理を行わないと、脂肪の増加や筋肉量の減少を招く可能性があります。
寒冷環境での代謝変化への対応
寒冷環境では体温維持のために通常よりも15-20%多くのエネルギーを消費します。エネルギー不足になれば、必要なエネルギーを生み出すために、筋肉を分解して活動エネルギーに変える「糖新生」が起きてしまいます。
体内のグリコーゲン(炭水化物)が枯渇すると、筋タンパク質が分解されてアミノ酸となり、これが糖新生の材料として使用されます。この過程が継続すると「筋肉量が減少」「体重の低下」「筋力の低下」となってしまいます。
筋肉量が減少し、筋力が低下すれば、特にスキーヤーの場合は膝関節の怪我のリスクが増大します。2023年、オーストリア・インスブルック大学の研究によると、5歳の年齢上昇ごとに前十字靭帯損傷リスクが25%増加することが明らかにされました。その理由は、「筋肉量の減少」と「筋質の低下」です。
加齢に伴う筋力低下は怪我のリスク要因となり、これを予防するためにはまずは滑る前に、しっかりエネルギーを摂取する必要があります。
基礎代謝を上げる朝食
温かい食事から始めることで、体温維持と代謝活性化の両方に効果的です。オートミールや玄米など、ゆっくりとエネルギーを放出する食材を選びましょう。

筋肉量維持のための栄養戦略
2023年、ニュージーランドのスポーツパフォーマンスリサーチ研究所の研究によると、過度なエネルギー摂取は、筋肉量の増加よりも体脂肪の増加につながりやすいことが明らかになっています。
タンパク質摂取がカギ
体重1kgあたり2.5-3.0gのタンパク質摂取が推奨されます。特にスキー場や宿泊先など通常の環境でない場合、食事だけで全てのたんぱく質量を賄うのは厳しい場合があります。そのような場合にはプロテインパウダーなどサプリメントを上手く活用することも大事です。
2012年、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の研究では、タンパク質の必要量を満たした後は、総エネルギー量が体組成に最も大きな影響を与えることが示されています。総エネルギー量が十分出会っても、体重当りのタンパク質量が足りない場合は、筋肉量維持には繋がりません。また余剰のエネルギー分は脂肪に変換していきます。
食べ過ぎたら、しっかり動きカロリー消費に努めることで体脂肪の増加のリスクを減らすことが出来ます。

高地での栄養管理
スキー場は標高が高いため、通常より多くのエネルギーと栄養素が必要になります。以下の点に注意しましょう。
水分補給の重要性
スキー場は標高が高く、特に冬場は非常に空気が乾燥しています。しかしながら、高地では体感的な喉の渇きが減少するため、スキーヤーは特に意識的に水分補給をする必要があります。食事からもある程度、水分摂取は可能ですが、血液のコンディションなどを考慮して、1日2-2.5リットルを目標に摂取するようにしましょう。

効果的な補食戦略
2023年、ニュージーランドのスポーツパフォーマンスリサーチ研究所が実施した調査では、適度なエネルギー摂取(通常の必要量+5%程度)が、過度な脂肪の増加を防ぎながら筋力を維持するのに効果的であることが報告されています。

まとめ
寒冷環境でのスキーでは、通常より多くのエネルギーを消費します。しかし、単に食事量を増やすだけでは脂肪の増加につながる可能性があります。適切なタイミングでの栄養摂取と、質の良い食材選びを心がけることで、筋肉量を維持しながら脂肪の増加を防ぐことができます。特に、タンパク質の摂取タイミングと水分補給を意識することが重要です。
参照エビデンス
Effects of high-calorie supplements on body composition and muscular strength following resistance training
レジスタンス・トレーニング後の身体組成および筋力に対する高カロリー補助食品の効果
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12094125
Effect of Small and Large Energy Surpluses on Strength, Muscle, and Skinfold Thickness in Resistance-Trained Individuals: A Parallel Groups Design
大小のエネルギー過剰がレジスタンス訓練者の筋力、筋肉、皮下組織厚に及ぼす影響:並行群デザイン
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37914977/
Effect of nutritional intervention on body composition and performance in elite athletes
エリートアスリートの身体組成とパフォーマンスに及ぼす栄養介入の効果
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23679146/
Impact of Environmental Factors on the ACL Injury Risk in Recreational Alpine Skiing
レクリエーション・アルペンスキーにおけるACL損傷リスクに及ぼす環境要因の影響
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/pdf/10.1055/a-2134-3908.pdf
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S-CHALLENGE Training Program Works 代表/フィジカルトレーナー
ファンクショナルトレーニングと筋力トレーニングを統合したトレーニングメソッドで、アスリートやスポーツ大好きな社会人クライアントの動作と機能を高めるサポートを展開。日本スポーツ協会 公認アスレチックトレーナー(JSPO-AT)、全米スポーツ医学アカデミー 公認コレクティブエクササイズスペシャリスト(NASM-CES)