外スキーに乗り切れないのは筋力の問題ではない!? 片脚支持の機能的トレーニング

整地されたフラットバーンでは、問題なくターンができる。けれど午後になってバーンが荒れてくると、外スキーへの荷重が甘くなる。スピードが出てくると、スキーのコントロールに不安を感じる。急斜面でターンを深く回し込もうとすると、切り上げが不十分になる。

こうした課題を抱えているスキーヤーは少なくありません。共通しているのは、条件が易しいうちは上手くターンできるのに、条件が厳しくなると上手く外スキーをコントロールできなくなることです。

これらの外スキーに対する課題を技術の問題として捉えると、雪上での反復練習が答えになります。ただし、スキーシーズンは限られていますし、同じ条件で滑れる機会も多くありません。

一方、前述した外スキーに対する課題は、オフトレシーズンでも解決できるものがあります。今回はその解決策のひとつ、「片脚で重心を支え続ける機能」について解説していきます。

外スキーに乗るとは、片脚で重心を支え続けることに他ならない

ターンの中で、外スキーと内スキーは別の役割をしています。外スキーが雪面からの外力に耐え、内スキーはバランスを保つ。この役割分担が崩れると、スキーは思ったように操作できません。

スキーのターン中に雪面から受ける力を調べたシステマティックレビューによると、この力はターンの全体で一定ではなく、ターン局面の後半で最大になることが示されています。ターン後半、板をたわませて方向をコントロールしていく場面で、外スキーにかかる負荷がもっとも大きくなるということです。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング

このとき体は、外スキー側の片脚の上に乗っています。両脚で支えているようでいて、荷重を受け止めているのは外脚一本です。つまり外スキーに乗るという行為は、片脚で重心を支え続けることと同じです。

ここで一つ、興味深い研究があります。スロベニア・リュブリャナ大学の研究チームが、エリートスラローム選手を対象に、ターン中の左右の地面反力の差と、筋力の左右差を比べたものです。結果は、両者に関係はありませんでした。

筋力に左右差があるから荷重に左右差が出る、というわけではない。筋力とは別の要因が、荷重のかかり方を決めているということです(左右差そのものへの対処法は、別記事「左右差解消! 四肢対称性を高めるスキーヤーのための筋トレ戦略」で詳しく解説しています)。

そしてもう一つ。片脚立ちのときの下肢の筋活動は、支持面の安定性によって変わることが別の研究で報告されています。同じ片脚立ちでも、床が安定しているときと不安定なときでは、働く筋が違います。

フラットバーンは、片脚支持にとって易しい条件です。そこで上手くターンコントロールできても、条件が厳しくなれば、ターンの切り上げが上手く出来ないなど、ターン弧のコントロールが難しくなってきます。このような課題はスキー技術の前に、片脚で重心を支え続ける機能にあります。

ターンの質を高めるためには、スクワットよりも片脚トレーニング

では、脚を鍛えれば解決するのか。オフトレで筋トレはしているけれど、なかなか雪上パフォーマンスに繋がらないスキーヤーの落とし穴がここにあります。

トレーニングで得た能力は、その動作の形に沿ってしか伸びません(この特異性の原則については、別記事「スキーパフォーマンスを高める『特異性の原則』とは?」で詳しく解説しています)。ノルウェー・西ノルウェー応用科学大学の研究チームが43件のシステマティックレビューを統合したメタ分析(複数の研究結果を統計的にまとめた分析)によると、ダンベルやバーベルを使った動的なトレーニングは動的筋力を大きく高める一方、静的な筋力への転移は限られていました。同じ「筋力」でも、鍛え方が違えば別の能力が高まるということです。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング

片脚と両脚の違いも同じです。ブラジル・ロンドリナ州立大学の研究チームによる、一側性(ユニラテラル)と両側性(バイラテラル)のレジスタンストレーニングを比較したメタ分析では、筋の成長はどちらでも同程度でした。しかし力の発揮の仕方は、トレーニングの様式によって異なる方向へ適応していきます。

筋肉は同じように育つ。けれど、力の発揮の仕方が異なる。

先日、新しく「プログラムサポート」サービスを始めたクライアントさんから、『筋トレが好きで長年継続してトレーニングしているのに、外スキーに対する安定感が弱い。スキーパフォーマンスを高めたい』というリクエストがありました。

スクワットやデッドリフトなど両側(バイラテラル)動作のエクササイズを中心にトレーニングされてきたとのこと。私の方で作成したトレーニングプログラムに、シングルレッグデッドリフトとブルガリアンスプリットスクワットなど、一側性(ユニラテラル)のエクササイズを設定したところ、思いのほか、できなかったとご報告がありました。

高重量を扱うトレーニングも好きなので、スクワットやデッドリフトなどのエクササイズも継続しつつ、ご本人から新しいプログラムの更新のたびに、一側性(ユニラテラル)のエクササイズをリクエストされます。片脚で行うエクササイズの重要性や効果について気づかれたようです。

このクライアントさんの場合は、陸上でできなかったことと、雪上で乗れなかったことが一致していました。次のシーズンでオフトレの成果を雪上で確認することになるので、現時点ではまだどのくらい雪上パフォーマンスが改善されているのかわかりません。ただ、両脚で鍛えた脚力が、片脚の機能的動作の向上に繋がらなかったことは確かです。

オフトレシーズン、スクワットやデッドリフトなど基本的な筋トレはしっかりやっているのに、外スキーへの働きかけが弱く、ターンの質をもう少し高めたいという方は、シングルレッグデッドリフトやブルガリアンスプリットスクワットなど、一側性(ユニラテラル)のエクササイズを取り入れてみてください。

なぜ両側(バイラテラル)のトレーニングだけでは、片脚支持の機能が高まらないのか。理由は、筋そのものではなく、筋と筋のつながり方にあります。

片脚支持の安定は、支持脚と対側をつなぐ筋の連携が生んでいる

片脚で立ったとき、体を支えているのは支持脚だけではありません。骨盤をはさんで反対側にある筋とのつながりが、片脚の上で体を安定させています。

筋肉は単独で働くのではなく、複数がつながって力を伝え合い、動きを安定させています。この働き方のまとまりをサブシステムと呼びます。体全体を1つの運動システムと見たとき、その中で役割ごとに分かれた部分系、という意味です。

深部で背骨を安定させるものと、体表側で動きそのものを担うものがあり、後者をまとめてアウターユニットと呼びます。前者については、別記事「滑りの操作性を高めるスキーヤーの体幹ローカル筋トレーニング」で詳しく解説しています。そのアウターユニットのうち、外スキーに乗る場面で働くのが次の2つです。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング、アウターユニット、

側方サブシステム(lateral subsystem)は、中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋・内転筋群と、反対側の腰方形筋でできています。担っているのは前額面——つまり左右方向の安定です。片脚で立ったとき、骨盤が支持脚の側に傾かないように保つ働きをします。外傾姿勢を作るときの中殿筋の役割については、別記事「中殿筋が斜度適応能力のカギ」で詳しく解説しています。

歩行や階段昇降のように片脚で体を支える場面で、大殿筋と中殿筋がしっかり働くと膝や股関節の動きが安定することが、11件の研究をまとめたシステマティックレビューで示されています。階段を登る動作は、自重で行う運動のなかで大殿筋がもっとも強く活動する動作のひとつだという報告もあります。

もう1つが後方斜めサブシステム(posterior oblique subsystem)です。広背筋と胸腰筋膜、そして反対側の大殿筋がつながっています。背中を斜めに横切って、下半身で生まれた力を体幹へ伝える経路です。

このつながりは実際に測定されています。歩行速度が上がるほど、広背筋と殿筋の活動は後方斜めサブシステムを介して同時に増えていく。ランナーでは、広背筋と反対側の大殿筋の力の伝達が強くなっていることも報告されています。

前述した私のクライアントさんがシングルレッグデッドリフトができなかったのは、この後方斜めサブシステムが働いていなかったからだと考えられます。デッドリフトで背中と脚を鍛えていても、斜めに力を伝える経路が使えなければ、体は片脚の上で安定しません。

筋力トレーニングと、こうした筋のつながりを働かせるトレーニングは、目的が違います。筋力トレーニングは筋を大きく、強くする。ファンクショナルトレーニングは、動作の質を高める。どちらもスキーヤーにとっては非常に重要ですが、片方のトレーニングばかりしても、もう片方でトレーニング効果を得るのは難しいです。

とくに左右対称の種目ばかりを続けている場合は注意が要ります。スクワットもデッドリフトも、両脚で同じように力を出す動作です。骨盤をはさんで斜めに力を伝える経路は、その中では使われません。

雪上のウォームアップで、こんなことがありました。サイドランジから片脚立ちで止まる課題を出したところ、皆さん最初はうまく立てません。そこで内転筋群と、中殿筋・小殿筋といった外転筋の活性化エクササイズを行ったところ、スムーズに立てるようになりました。

筋力が数分で増えたわけではありません。もともとある筋のつながりが、働く状態になったのだと考えています。

陸上でできる片脚支持のチェックと、オフトレへの取り入れ方

まず、自分の片脚支持がどんな状態かを確認してみてください。鏡の前か、スマートフォンで撮影しながら行うと分かりやすくなります。

片脚で立ったとき、支持していない側の骨盤が下がっていないか。左右で下がり方に差はないか。片脚立ちのまま、上体が横に傾いていないか。

スクワットやランジをしたときに、膝が内側に入っていないか。太ももが内側にねじれるように動いていないか。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング

そして、疲れてきたときにどうなるか。最初はできていても、繰り返すうちに骨盤が横に逃げたり、上体を傾けて誤魔化したりしていないか。

これらは側方サブシステムがうまく働いていないときに現れやすいサインです。ひとつでも当てはまるなら、片脚支持の機能に伸びしろがあると考えて良いと思います。

順番は、活性化から

片脚のエクササイズをいきなり始めても、思うような効果は得られないかもしれません。筋のつながりが働く状態になっていなければ、動作の質は上がらないからです。

運動前に神経と筋を働きやすい状態にしておくことの効果は、複数の研究で確認されています。アイソメトリック収縮(関節を動かさずに力を発揮する収縮)を用いた活性化がその後のパフォーマンスを高めることや、神経筋ウォームアップが方向転換能力と膝の筋力を高めることが、それぞれ複数の研究をまとめた分析で示されています。

雪上のウォームアップで内転筋群と外転筋群の活性化を行ったところ片脚立ちが安定した、という先ほどの例も、この順序が働いた結果だと考えています。

難易度は3つの要素で決まる

エクササイズの難しさは、動作の方向左右の対称性、そしてその組み合わせで決まります。

両脚で、前後または左右の動き——ここが出発点です。安定した状態で、自重を支える感覚をつかむ段階になります。

片脚で、前後または左右の動き——支持基底面が狭くなり、体幹と股関節周りの筋を動員する必要が出てきます。片脚支持の機能を高めていくのは、主にこの段階です。

回旋を含む動き、または複数の方向を組み合わせた動き——スキーの動作にもっとも近い段階です。多方向への対応力や、動作の調整能力が養われます。

スキーヤーに取り入れてほしい4種目

サイドランジは、両脚支持のまま左右方向へ重心を移動させる動作です。内転筋群と外転筋群が同時に働き、前額面での重心コントロールを覚えるのに向いています。片脚支持の準備段階として最初に置きたい種目です。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング、サイドランジ

ワンレッグ・クォータースクワットは、片脚立ちの状態から浅くしゃがむ動作です。深く沈む必要はありません。スキーブーツを履いた状態では足関節の動きが制限され、深く沈み込むことはできないためです。支持脚の上で骨盤を水平に保てるかが要点になります。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング、ワンレッグクォータースクワット

ブルガリアンスプリットスクワットは、後ろ足を椅子に乗せて行います。後脚が軽く支えてくれるぶん、完全な片脚立ちより取り組みやすい種目です。それでいて骨盤の安定性はしっかり要求されます。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング、ブルガリアンスプリットスクワット

シングルレッグデッドリフト・トゥタッチは、片脚立ちのまま上体を前傾させ、反対の手で足先に触れにいく動作です。この動きでは骨盤が開こうとするため(骨盤回旋)、それを制御する過程で後方斜めサブシステムが働きます。4種目のなかではもっとも難易度が高く、片脚支持の完成形に近い種目だと言えます。

外スキー、片脚支持、機能的トレーニング、シングルレッグデッドリフト

ここで紹介した4種目に加えて、足裏の感覚を使ったバランストレーニングのバリエーションは、別記事「スキーヤー向けバランス感覚向上トレーニング」で詳しく解説しています。

まとめ

外スキーに乗り切れないという課題は、雪上の技術だけの問題ではありません。今回お伝えした要点を整理します。

  • 外スキーに乗るとは、片脚で重心を支え続けること。ターン後半で外スキーへの負荷は最大になり、そのとき体は片脚の上にある
  • 筋力の左右差と、荷重の左右差は一致しない。荷重のかかり方を決めているのは、筋力とは別の要因
  • 両脚で鍛えた力は、片脚の機能にそのまま移らない。筋肉は同じように育っても、力の発揮の仕方が異なる
  • 片脚支持を支えているのは、支持脚だけではない。骨盤をはさんで反対側の筋とつながる側方サブシステムと後方斜めサブシステムが働いている
  • 左右対称の種目だけでは、股関節まわりの機能性は高まらない。筋力トレーニングとファンクショナルトレーニングは、目的が違う

まずは、片脚で立ったときに骨盤が下がっていないかを確認するところから始めてみてください。鏡の前で10秒立ってみるだけでも、左右の違いに気づくことがあります。

オフトレシーズンは、雪上ではできない身体の作り直しができる時期です。シーズンが始まってから気づく課題を、いま潰しておく。そう考えると、片脚のエクササイズに取り組む時間も、少し楽しくなってくるのではないでしょうか。

科学的根拠に基づいたスキーヤーのためのトレーニング方法を、メールで受け取りませんか?

今回の記事のように、最新のスポーツ科学や論文データに基づいた「スキーオフトレ情報」や「身体の使い方のコツ」などをニュースレター限定で配信しています。より効率良く、期待したトレーニング成果を得たい方は、ぜひご登録ください。

ニュースレター購読希望フォーム (黒文字)

参照エビデンス